世田谷代田ものこと祭りって?
世田谷代田は新宿から小田急線でわずか12分。となり町は若い人びとでにぎわう下北沢。でも、世田谷代田にはそんなにぎやかさは少なく。実は世田谷代田駅前は、かつては栄えていたであろう面影を残した商店街が、シャッター街となってしまっています。
55年ほど前には140軒ものお店が並び、人びとの生活の中心でにぎやかだった世田谷代田の商店街は、環状7号線(略:環7)開通の影響で状況は一変。分断された商店街はたちまち人が流れてこなくなりました。当時からあるお店も、今では2軒ほどしかありません。そんな悲しい歴史を持つ世田谷代田を、楽しく元気にしたいとの思いから始まったのが「世田谷代田ものこと祭り」。
街を盛り上げる ”もの” と ”こと”
ものこと祭りはその名の通り、”もの” と ”こと”が集まった祭り。開催7回目となった今回は、地元商店をはじめ、全国から47組のもの作り職人や飲食屋台が集まり、工芸やアート、子どもワークショップなどを開催しました。
会場は街なかの商店街と、代田八幡神社の2会場。開催7回目で、街なかには世田谷代田を気にいって新しい店も入ってきていますが、まだまだその数は多くありません。商店街の中のシャッターが降され空いてしまっている店舗が、全国からやってきたもの作り職人たちの舞台となります。
その規模は、神奈川県大磯町にある洋服店「福月洋装店」や、 京都府槇島町の家具雑貨などを販売する「平山日用品店」、静岡県島田市でかつお節などを製造販売する「海産物処ふじ田」など。つくり手が直接作品・商品を持ち、世田谷代田に集結しました。店を見て回ると、つくり手は真剣なまなざしでものを語り、使い手も深くうなずきながら使うことをイメージしていた様子。普段だったら出会うことのない作品や商品、そして人と出会う喜びが、この祭りを盛り上げていました。
にぎわいの輪
環7を渡って2つ目の会場代田八幡神社へ。ここには、地域の人びとや全国のグループによる子どもワークショップ、ライブミュージック、飲食屋台などが集結。神社の雰囲気にいっそう祭りらしさを感じます。
ワークショップでは、動物モビールづくりや、竹とんぼ教室、ダンボールアートでの遊びなど、つくり手として、使い手としての喜びを知る体験がありました。地元の大人たちに、ワークショップを通してものづくりの楽しさを教わる子どもたちの顔にはとびきりの笑顔! でも、一番嬉しそうな顔をしていたのは大人たち。子どもたちの笑顔に、かつてのにぎわいを思い出したのでしょうか。「また来てね」と笑う大人たちの笑顔もとびきりでした。
ライブミュージックのステージには、子どもたちによるオーケストラやバレエ、世田谷を拠点にお話会を開催する「代田お話劇場このゆびとまれ」による読み聞かせや、和太鼓ユニット「フナタマ」による迫力の和太鼓演奏などに、子どもたちは大喜び。祭りを大いに盛り上げてくれました。
お昼時には、いい匂いが立ち込める屋台に行列ができ始めます。特に長い列を作っていたのは、豪徳寺に店をかまえる「爆汁肉餃子 二代目龍太郎」。肉汁あふれる『爆汁肉餃子』と、定番の味という『龍太郎餃子』のセットは、噛めば噛むほどに素材の旨みが口の中に広がりあっという間に完食。後味も癖がなく、何個でも食べたくなる餃子とはまさにこのこと!聞いてみたところ、現在は店舗と通販で冷凍餃子のみを販売しているらしいのですが、9月からは店舗でテイクアウトを開始するとのこと。またアツアツの餃子が食べられるのかと思うと今から楽しみです。
爆汁肉餃子 二代目龍太郎
東京都世田谷区豪徳寺1-45-2
https://nidaime-ryutaro.shop-pro.jp/
冷たいものを探し求め歩いているところ『水出し緑茶』という文字を発見。昔ながらの商店の佇まいをしたお茶屋さん「茶舗 佳仙」は、今はわずかとなってしまった世田谷代田に昔からある店のひとつ。店内には静岡産や鹿児島などを中心にそろえるお茶や陶器がずらりと店内に並んでいます。店主はものこと祭り開催時に地元の人と主催側の間をつないでくれた影の立役者でもあるそう。そんな世田谷代田を支えた店の水出し緑茶は、優しく喉を潤してくれました。
世田谷代田の街を舞台に約半日開かれた祭りには、今年も多くの人びとが訪れ、かつての世田谷代田のにぎわいはこんなだったのかなと想像することができました。全国のつくり手が持ってきてくれたその土地のにぎわいが、世田谷代田に集まることでまた広がったにぎわいの輪。そうして少しずつ、世田谷代田も地方の土地にも、ものとこと、そして人びとによるにぎわいの輪がたしかに広がっていると感じました。
(はせがわ)
2018/09/11