まさたかさん
賑やかな三軒茶屋から環状7号線を越えて世田谷に引っ越してきた、まさたかさん。ここには穏やかな時間が流れているけれども、それもまた刺激。世田谷ミッドタウンに住まいを移したことで広がった世界を語ってくれた。やっぱり自転車は頼もしい存在だ。
編集・文:加藤将太 写真:安澤英輝
訪れたことのないエリアに住もう
2016年の3月で丸4年の世田谷ミッドタウン暮らしを迎えるまさたかさん。現在の住まいは世田谷通り沿いのマンション。最寄り駅は東急世田谷線世田谷駅だが、以前は三軒茶屋駅の近くで暮らしていた。これまでも環状7号線を越えた世田谷エリアに引っ越してきた人々を取材してきたが、まさたかさんはなぜ住まいを移したのだろうか。
「実は彼女と同棲しているんですけど、お互い三軒茶屋に住んでいたんです。二人で住めたらいいねと話し始めたときに出てきたエリアが世田谷方面でした。僕の移動手段は基本的に自転車だから正直どこに住んでもいいんですけど、当時彼女が三茶で働いていたから通いやすいところがよかったですし、結局僕らが決めたのは訪れたことのないエリアに住もうということで。引っ越すまで環七を越えたことがなかったので、その先には何があるんだろうというワクワク感がありましたね」
住む場所を変えることでライフスタイルを変えたい。
環状7号線を西に越えたことがなかったのは、三軒茶屋で生活の用事が事足りてしまっていたから。あまり当時は一人で散策するのが好きじゃなかった。けれども、自分の中で決めた狭いエリアでの生活が物足りなくなってきた。住む場所を変えることでライフスタイルを変えたい。その機会を求めて、引越しを決めたのだった。
今の住まいは築30年以上経っているけれども、生活空間は綺麗にリノベーションされていて築年数を感じさせないし、実際にまさたかさんのライフスタイルは変わったという。以前の職場では勤務時間が長く、三軒茶屋の家に帰ったら寝るだけという生活の繰り返しだったが、今の仕事に就いてからは生活に余裕が出来てきた。生活のペースを掴めたことが何よりも大きかった。
「ほんと、いろいろなところに行くようになりましたね。よく行くお店は自宅から近い『ちゃんぽん長崎』。引っ越した初日に行って以来、通い続けてます。最近は『串カツ田中』のはす向かいにある『カフェ アンジェリーナ』。入りづらかったお店だったけど、勇気を出して入ってみたら一人でも落ち着ける場所でした。パソコン作業をするときに行くんですけど、時間を忘れて集中できますね。上町にある唐揚げ屋さんの『ヤマキ』もたまたま見つけたお店です。仕事の帰りが遅いときは『一心』でラーメン。ここは食べる分には困らないエリアですね。自転車で駒沢公園に行ったときに『Pretty Things』っていうカフェも見つけました。自転車はゆっくりにもスピーディーにも思いつきで移動できるんですよ」
出かけるたびに知らなかったお店が見つかる
現在は千駄ヶ谷にあるサイクルウェアショップ『Rapha』に勤めているまさたかさん。帰りが23時過ぎになることもあるそうだが、引っ越した当初は賑やかな三軒茶屋とのギャップから、帰ってくる時間に街が静まり返っていることに驚いたという。三軒茶屋と同じ世田谷区、しかも交通量の多い世田谷通り沿いの住まいだから、もっと騒々しいと思っていたのに。
環状7号線を越えて気づいたのは夜の静けさだけではない。自転車で移動していると、個人店が沢山あることにも気づきはじめる。洋食屋さん、たこ焼き屋さんなど、知らなかったお店が出かけるたびに見つかる。まるで迷路探索のよう。そのうち路地に入りたくなって新しいお店を見つけることも生活の一部に。下馬にあるサイクルショップ『BLUE LUG』にも情報交換と買い物がてら立ち寄るようになった。
「僕が普段走っている距離と比べると都内の移動は大したことなくて。自転車でお店までは自転車で15分くらい。朝の出勤時間に余裕があるときは松陰神社の『SUDO』でパンを買うこともあります。東京は自転車が一番早いと思っているくらいですし。でもバスに乗るのは好きなんです。出来れば席はどこでもいいんですけどバスは座って楽しみたい。渋谷まで一本で行けるんですよね」
全体的にのんびり暮らしているのも刺激
三茶と世田谷は1,2kmしか離れていないのに、まさたかさんはその距離以上の何かを感じているという。この街に住んで半年後には4年を迎えようとしているが、改めて世田谷ミッドタウンの魅力を聞いてみた。
「三軒茶屋はお店が一定のエリアに集約されているけど、こっちは点在しているんですよね。それに住んでいる人も違うというか。今の住まいの地域には、おじいちゃん、おばあちゃんを多く見かけることもあって、全体的にのんびり暮らしている印象があるんです。それぞれ違った刺激がありますけど、今の僕には三茶にこだわる必要はなくなりましたね。何もかも済ませていたけど、その比率が環七を越えることで変わりました。地図を見るのが好きになって、お気に入りのお店を含めた自転車のルートを作るのが楽しいんです。彼女の職場の都合で次の更新のタイミングで引っ越すことになるかもしれないけど、正直世田谷から離れたくないです。だから、必死に説得しているところで(苦笑)」
まさたかさんにとって住まいから最寄り駅が遠いことは問題ではない。自転車があることで行動範囲が広がれば、行動の選択肢も増える。そうすると移動中の景色の変化を楽しめるようにもなってくる。絶対ではないけれども、もし世田谷ミッドタウンに住むのであれば、自転車のある生活のほうがきっとエリアを楽しめるだろう。