しげもりさん・えみさん
造園業の会社で働くしげもりさんとカフェで働く料理が大好きなえみさん。結婚した7年前から始まった桜新町ライフ。その後、桜新町の中で引っ越しをして今もなお住み続ける二人に聞く街の魅力とは?
構成・文章:加藤 将太 写真:阿部 高之
桜新町から桜新町への引っ越し
「お付き合いしていた頃、僕は三軒茶屋、奥さんは中目黒に住んでいて。結婚してからはずっと桜新町暮らしですね」(しげもりさん)
「桜新町に住むようになったのは7年前になりますね。最初の6年間は今とは別の住まいで、今年の3月からここに引っ越したんです」(えみさん)
結婚を機に桜新町での暮らしをスタートさせた、しげもりさんとえみさん。当時のしげもりさんは赤坂、えみさんは表参道勤務。新婚生活の新居として探していたのは、お互いの職場がある渋谷方面に出やすい、田園都市線沿線の三軒茶屋か駒沢だった。どちらも人気のエリアだから、家賃の相場は決して安くない。そこで新たに出てきた選択肢が桜新町。先の2つのエリアより家賃は高くなく、程なくして最初の住まいに巡り合った。
「前の家は今の家から徒歩10分圏内の場所にあるんです。前の家が住んでいるうちに手狭になってきて、桜新町でずっと物件を探していたけど、なかなかいい物件が出てこなかったんです。今の家が見つかったのは前の家を更新した直後で、更新料が勿体なかったけど、思いきって引っ越しを決断しちゃいました」(えみさん)
「奥さんが料理好きなので広いキッチンがある物件を探していたんですよ。前の家のキッチンは一人暮らし用並みに狭くて、料理するのが大変そうで。こんな立派なキッチンの物件に出会えてよかったです。前の家はL字の構造で使えるスペースが少なかったけど、今の家はリビングが広くて窓が開放的だし、以前よりも駅が近くて便利になりました」(しげもりさん)
桜新町はサザエさんの街
ところで、しげもりさんとえみさんはなぜ桜新町内での引っ越しを決めたのだろうか。二人が思う桜新町のよさを聞いてみた。
「僕が一番思うのは住みやすい街だということですね。三軒茶屋も好きな街ですけど繁華街がごちゃっとしている印象があって。桜新町にはそれがないし建物も低いものばかり。閑静とまではいかないけど、すごく住みやすいんです。あと高校とか大学があるから、街が学生で賑わっている感じも好きですね」(しげもりさん)
「桜新町は田園都市線が走っている交通の便がいいエリアなのに、ゆったり暮らせるんですよね。私は料理が大好きだから、お魚屋さんの「神田屋」さんとか個人のお豆腐屋さんが近所にあるのが好きです。私にとっては豊かな食生活を楽しめる街というか。ハムが美味しい「ファインシュメッカー サイトウ」、担々麺が絶品の「紅蜥蜴」、「砂の岬」のカレーも大好きです。あと、桜新町はサザエさんの街じゃないですか。そんなところも桜新町の良さですね」(えみさん)
そう、桜新町のシンボルといえば、サザエさんだ。『サザエさん』の原作者である長谷川町子さんが住んでいたことに大きく由来し、国道246号線に程近いセブンイレブンは、以前は「三河屋」という酒屋で、『サザエさん』に登場する「三河屋」のモデルでもある。また、長谷川町子美術館では、『サザエさん』の原画が常設展示されていて、桜新町駅と長谷川町子美術館を結ぶ商店街通りは「サザエさん通り」と名づけられている。通りに流れているBGMはサザエさん関連の曲だ。さらに、駅前の磯野家・フグ田家の銅像をはじめ、公共スペースのあちこちにサザエさんの登場人物たちのイラストが描かれており、作品のファン以外にも多くの人々が足を運んでいる。ニュースにもなった波平の髪の毛は、くれぐれも抜かないように。
散歩が大好きな二人
しげもりさんとえみさんの共通の趣味は散歩。「付き合っているときから続けていて、歩くのがすごく好きなんです」と話す二人は、渋谷から六本木まで平気で歩いてしまうのだという。しかも服装はウォーキング用というわけでもなく普段着のままで。そんな歩くのが大好きな二人にとって、桜新町とその周辺は歩き甲斐があるのだとか。
「僕はもともとグラフィックデザイナーだったんですけど、今は造園業の会社で働いていて、庭を造ったり木を剪定したりしています。毎日朝8時頃から仕事がはじまるので、6時頃には起きて7時には家を出るという感じですね。職場は自由が丘のほうにあるんですけど、いつも緑道を通っています。自由が丘や深沢は高級住宅が多いけど、桜新町を歩いていて思うのは、どこかほのぼのしていて対照的なんですね。自分はのんびりやだから、この街の雰囲気はすごく合っていると思いますね。通勤路の緑道は花見の季節を歩くのが最高ですよ」(しげもりさん)
「私は駒沢のカフェで働いていて、毎朝9,10時くらいに起きているから、知らぬ間に旦那さんは先に仕事に出かけています(笑)。旦那さんがいないときは一人で近所を散歩することもありますけど、基本日曜日は一緒に過ごしていますね。とにかく桜新町は歩いて買い物がしやすいですよ。遠くまで行かなくても、いろいろと買い物が済みますから」(えみさん)
最後に、二人はこれからも桜新町で暮らし続けていくと結んでくれた。ときには自宅に友人たちを招いて食事会を開くこともあるそう。キッチンとダイニングテーブルの脇には、ビールにワイン、焼酎の空きボトルがずらり。友人たちがお酒を持ち寄り、えみさんが振る舞う料理を楽しむのだという。いろいろと街の魅力を話してもらったけれども、気心の知れた人たちを自分たちの家に招きたいという気持ちも、直接的な表現ではないものの、自分たちが暮らす街を好きだと言っているように感じた。