けいいちろうさん・なおみさん

最寄り駅
祖師ヶ谷大蔵

住まいの最寄り駅は、祖師ヶ谷大蔵と成城学園前の間にある閑静な住宅街。閑静な住宅街は安心して暮らせるけれども、どちらの駅にも徒歩ではかなりの時間がかかってしまうし、買い物に便利な立地とはいえない。この街で約20年暮らしてきた夫婦は、なぜこの場所を選んだのだろうか。その答えは家族の日常にあった。

文章・構成:加藤 将太 写真:池田 宏

賑やかな商店街と閑静な住宅街に挟まれた地域

世田谷区内で病院を経営するけいいちろうさんと妻、なおみさんが暮らすのは、世田谷の西に位置する祖師谷・成城エリア。小田急線祖師ヶ谷大蔵駅前を中心に賑わう3つの商店街の愛称は「ウルトラマン商店街」。下町情緒あふれるそれぞれの商店街にはウルトラマンをあしらったゲート、街路灯、旗が設置され、商店街オリジナルのウルトラマングッズまで作られている。ちなみに、なぜここまでウルトラマンにフォーカスしているのかというと、ウルトラマンの生みの親である円谷英二さんの自宅がウルトラマン商店街内の祖師谷3丁目、円谷プロダクションの本社が砧7丁目にあったことに由来している。

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「我が家は祖師谷大蔵と成城学園前の間にあるので、両方の街を使い分けています。祖師谷商店街は夜遅くまでやっている飲食店がいっぱいありますし、食材がしっかりと揃うんですよ。成城は夜7時、8時にはほとんどのお店が閉まって、街が真っ暗になっちゃう。仕事で帰りが夜遅くなると、「成城石井」でおかずを買って簡単にご飯を済ませることもありますね。成城石井は高いけど、ウチは主人と私と娘の3人暮らしだから重宝しています」(なおみさん)

「成城も祖師谷も街が適度に新陳代謝しているというか。年配の方ばかりにならなくて、年配の方が住んでいた戸建が売りに出ると、小学生、それ未満のお子さんのいる若いご家族が引っ越してくることがぽつぽつある地域なんです。子育てが大変な世帯から子どもが独立した私たちくらいまで、長い間住める場所だと思います。ライフステージによって違った楽しみ方ができる街なんじゃないかな」(けいいちろうさん)

引っ越しの決め手になった近所のお散歩ルート

けいいちろうさんとなおみさんが以前に暮らしていた場所は同じ世田谷ミッドタウンの経堂エリア。娘さんが幼稚園生だったときに、「駅から遠いけど子どもが遊べるゆったりとした街」「生活空間が手狭になっても便利な街、駅から近い住まい」、そのどちらから新居を選ぼうとした結果、前者にあたる現在の祖師谷・成城エリアに構えることを決めた。

「当時はまだ娘が小さかったので、車もありましたし、自宅から駅からの距離はなんとかなるだろうと。土地を増やすのは難しいけど、車は増やせるかもしれないということで(笑)。決め手のひとつには、この『祖師谷公園』が大きかったですね。当時から犬を飼っていたので、犬の散歩に丁度いいんですよ」(けいいちろうさん)

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けいいちろうさんとなおみさんは2匹の愛犬とも暮らしている。プードルのデイジー(グレー)とラム(白)だ。愛犬たちとの散歩は欠かせない朝晩の日課。その散歩ルートとして仙川沿いに広がる祖師谷公園が定着している。祖師谷公園は早朝から犬の散歩はもちろん、太極拳を楽しむご近所のご年配、ランナーなど利用客が多く、昼前後からは遊具遊びを楽しむファミリー層も訪れる。

「私は朝食をつくるから、基本的に朝の散歩は主人だけで行くことが多いですね。夜の散歩は主に私の係なんです。祖師谷公園は、たとえば代々木公園や駒沢公園みたいによそからわざわざ集まるような公園じゃないので、賑わい過ぎないんですよ。落ち着いて散歩できるんです」(なおみさん)

毎朝、けいいちろうさんは愛犬たちの散歩を終えると7時半には病院に出かける。なおみさんはその時の仕事と家事のバランスを考えて、出勤する時間を調整しているという。診察や手術の関係で夜は当然帰りが遅くなることもある。帰ってくる時間が読めないと犬の散歩も行きにくくなるが、夫婦で朝晩工夫して愛犬たちとの暮らしを大切に過ごしてきた。

週末は夫婦共通のライフワークへ

ご夫婦には趣味以上のライフワークとなっている共通項がある。

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取材当日は愛犬たちとの散歩を終えると、車を1時間半ほど走らせて千葉県へ。目的地はなんと乗馬クラブだ。けいいちろうさんとなおみさんは、乗馬のためにこの場所を月1度は必ず訪れるのだとか。仕事が忙しくなければ週1度来ることもあり、約7年通い続けているという。

「乗馬をはじめたのはもう40年以上前のことになりますね。たしか小学校3年くらいのときだったかな。乗馬はお金がかかるとウチの両親は反対したんだけど、動物好きな姉が『馬に乗りたい』と言って、その影響で僕もはじめたんですよ。この乗馬クラブはどこか他を見ていただいたらわかると思うんだけど、都内にはここほど環境のいいところはないと思いますね。馬術のナショナルチームの選手を教えている先生もいるんです」(けいいちろうさん)

「私は大学の馬術部からですね。私の親も『乗馬なんて危ないしお金もかかる』って反対されました(笑)。それで、大学に入学したら自分の責任で、という感じで馬術部に入ったんです。馬に乗る人たちの中には、競技に出場するから練習するという人もいれば、私みたいに馬の手入れをして乗って、自分の思った通りの運動ができればそれでOKというタイプの人もいるんです」(なおみさん)

オリンピック競技にもなっている馬術だが、二人は馬と接していると何より気持ちが安らぐという。馬術は他のスポーツと違って自分自身の管理以上に馬の管理に気を配らなければならない。たとえば野生の馬は普段、150センチ以上の障害物など飛ばない。1分ちょっとの走行時間の間に10以上のそれを飛ぶと足に負担がかかる。脚を冷やしてあげたりマッサージしてあげたり、そういった細やかなケアを通じてコミュニケーションを図るのだと教えてくれた。たしかに人参を食べたり体を撫でてもらったりしている馬の表情は気持ちよさそう。

「ただ乗っているだけじゃなくて、足で馬体を挟んで、その足の位置と圧迫の加減で馬とコミュニケーションをとっているんです。鞍の上に座って何らかの形で馬に体を接触させているんですね。跨った感じ、体温のぬくもりとか、しばらく乗ってないと馬はそれをすごく欲しくなる。降りたときに甘えてくるんですよ。その辺りは犬や猫と同じです。管理は大変ですけど、自分が汗を流す以上に癒されているというか。リフレッシュできる対象だと思います」(けいいちろうさん)

家族にとってちょうどいい場所

「祖師谷・成城エリアは私たちにとってちょうどいい場所ですね。郊外にも都心にも近い。その距離感がいいんです。娘が小さかったときは自転車で野川沿いに等々力の方まで散歩していましたね。自然が適度にあるという意味でも、やっぱり子育てしやすい地域だと思いますよ」(なおみさん)

「ウチは祖師ヶ谷大蔵駅と成城学園前駅から、それぞれ徒歩18分くらいの距離なんです。でも、ウチに車は必須だから、駐車場さえ確保できればその距離はあまり苦にならないかなって。それに毎日散歩している僕らにとっては、歩こうと思えば歩ける距離だから。車を持っている方たちには遠方に出かけるのに便利な場所だと思いますよ。近くに環八(環状八号線)が通っているし、高速道路も複数乗ることができる。首都高、中央道、東名も近いですし」(けいいちろうさん)

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2つの最寄り駅までの距離は決して近いとはいえないけれども、車があったことで今の生活が見えてきた。以前住んでいた経堂と比べれば便利な環境ではないのかもしれない。それでも安心して子育てに取り組めて、夫婦共通のライフワークの時間も愛犬たちとの時間も変わることなく確保できた。住まいにまつわることをあれもこれも叶えることは難しい。自分たちが送りたい生活、歩みたい人生と向き合うことで、自ずとその答えが見えてくる。けいいちろうさんとなおみさんの生活は、まさにそれを物語っていると感じた。

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