ヤスさん・だこさん

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若林

若林歴7年目を迎えたヤスさん・だこさん夫妻。カップルから結婚しても、最近になって引っ越した先も変わらず若林。それほどに世田谷ミッドタウンのファンとなった背景には、どんなことが影響しているのだろうか。そこにはふたりにとっての“ちょうどよさ”が深く関わっていた。

文章・構成:加藤 将太 写真:アカセ ユキ

若林歴6年、ここで夫婦になった二人

常に交通量が多い環状7号線(以下、環7)を南下すると、交通信号機が電車の遮断機の代わりを果たしているポイントがある。東急世田谷線の線路と道路が交差する遮断機のない踏切。若林駅から徒歩1分ほどのこの場所は、せたがやンソンが定義する世田谷ミッドタウンの印象的な風景のひとつだ。若林陸橋からは世田谷線の電車と車と人が行き交う独特の風景がよく見える。

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渋谷区でiPhoneアプリ企画開発会社を営むヤスさんと妻のだこさんは若林に住んで7年目を迎えた。2010年の春に住み始めた頃は二人が結婚する前。2013年10月に結婚して、家族になってからも若林に住み続けている。

「もともと奥さんが下北沢で一人暮らしをしていて、僕は地元の小岩に住んでいたんです。『一緒に住もうか』と話したとき、同棲をする上で広い家に住みたくて、最初は下北沢と三軒茶屋の近郊で探していたんですけど、懐事情に見合う物件が無かったんですね。それで、たまたま初期費用が安い物件が若林に見つかって、広さと賃料の条件がマッチする物件ということで若林を選びました」(ヤスさん)

「旦那さんと同棲する家を探しているときに、はじめて世田谷線の存在を知ったんです。最初はどうやって乗るのかもわからなくて、当時は世田谷線のキャラクターに“せたまる”という可愛いキャラクターがいたんですけど、せたまるがなくなったのはショックでしたね(笑)。私は大阪から上京して、はじめての一人暮らしが下北沢だったんです。最初はわざわざ大阪から東京に出てきているのに、都心をある程度感じられない場所に住むのは嫌でした。言葉は悪いけど、下北から若林に引っ越すのは都落ちで、いろいろと不便になるのかなって。最初は前のめりで若林に住みたいというわけじゃなかったけど、いざ住んでみたら簡単に抵抗が無くなりましたね」(だこさん)

ヤスさんとだこさんは2016年4月に引っ越しを終えたばかり。二人が引っ越した先はまたしても世田谷ミッドタウン、しかも以前と同じ若林だった。今の住まいに引っ越すときに、もう少し都心に寄ろうと考えたこともあった。ところが、「わざわざこの街に足を運ばなくなるのかもしれない」と思ったら、逆に離れるのが寂しくなったという。気づいたら、二人は若林の虜になっていた。

気取っていないのがちょうどいい

若林から離れられなくなったヤスさんとだこさん。最初はコスト重視で若林に住まいを選んだ二人に、家だけでなく街も気に入った理由を聞いてみた。

「若林を含めて、ここから西の松陰神社や上町とかは、僕らが住み始めた頃から新しいお店と昔ながらのお店が共存するような街に変わってきたと思います。その街の変わりようが面白いですよね。もうひとつは交通の利便性。職場の渋谷までバス1本で行けますし、深夜バスも通っている。自転車でも家から道玄坂上まで20分前後ですし、よく会社から歩いて帰宅することもあるんですが、考え事に丁度いい距離感なんですよ」(ヤスさん)

「私も恵比寿の会社に勤めていた頃は若林から自転車で40分くらいかけて通っていました。歩くのが苦じゃない私たちにとって、池尻大橋、下北沢辺りは余裕で歩いて行ける範囲ですね。私はずっと世田谷区に住んできて、東京の中のローカルと面白さを感じられるところが自分の肌に合っているなって感じます。20代の頃はとにかく刺激を求めていたけど、今は当時と生活の優先順位が変わってきていて。遊びに行く場所は東京を多少感じたいけど、自分たちが住んでいるところがそうだとしんどい。気取っていない場所がちょうどいいと思えたら、もっとやりたいこと、好きなことに素直に生きていきたいと思うようになった。その結果が今の私たちです(笑)」(だこさん)

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二人にはもう一人の家族がいる。同棲して間もなくして暮らすようになったウサギ、ネザーランドドワーフのマシューだ。「もっとやりたいこと、好きなことに素直に生きていきたい」という想いの表れ。そのひとつが念願だったウサギとの生活だった。

「マシューを含めて、私たちは家でそれぞれの自由な時間を過ごしている感じですね。ウサギは手が掛からなくてオススメの動物ですよ。『ウサギは寂しいと死んでしまう』はウソだと思います(笑)」

趣味を大事にしながら生活するヤスさんとだこさん。2014年1月に会社を立ち上げたヤスさんは会社経営者でありながら、ハードコアバンドのギタリストとしても長らく活動中。多忙な仕事の傍ら、昨年は70本前後のライブをストイックにこなした。ライフワークのバンド活動は達成感やストレス発散を得られると同時に、音楽を介した新しい出会いをもたらしてくれて、公私ともに大きな刺激になっているという。

一方のだこさんは自他ともに認める収集癖の塊。以前はタイツの収集に夢中だったが今はアニメと漫画にぞっこんだ。自宅リビングにはフィギュアの保管・鑑賞用ディスプレイが置かれてあり、中には自慢のコレクションたちが鎮座。本棚には通好みの漫画がずらりとラインナップされている。お互いの趣味趣向を尊重する関係は理想の夫婦像のひとつだ。

新代田駅前にある大切な場所

若林を拠点に、徒歩と自転車での外出を楽しむヤスさんとだこさんのお気に入りの場所は、自宅から徒歩15分圏内、京王井の頭線新代田駅前にある新代田のコーヒーショップ「RR」と、そのご近所のライブハウス「FEVER」と「FEVER」併設のカフェ「PoPo」だ。

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「『RR』は『FEVER』を経営する西村さんがオーナーで、よくお世話になっています。『FEVER』は自分のバンドも出演させてもらっている大切な場所で、昨年亡くなってしまった看板犬のリーバが大好きだったんですよね。今はチロルという看板犬がいます。今日はマシューを連れてきて、チロルと顔合わせできたのが嬉しかったですね。マシューは逃げ回っていたけど(笑)。『PoPo』は普段使いはもちろんですけど、打ち上げで利用させてもらっています」(ヤスさん)

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「『FEVER』にリーバとチロルがいるから『もしかして…』とは思っていたけど、『PoPo』がペットOKだったことを今日はじめて知りました。マシューは滅多に外出しないけど、災害時の避難生活を考えて、外の世界に慣れるという意味で外に連れて行くことがあるんです。自宅の近所でペットOKの場所を知らなかったから、『PoPo』がそうだったのはめちゃくちゃ嬉しいです」(だこさん)

東京の刺激は必ずしも大都会にあらず。

通い慣れた場所での新たな発見に心が躍ったヤスさんとだこさんにとって、大きな収穫のある一日だった。特に望んではいないけれども、二人が世田谷ミッドタウンを離れることはなかなか難しそう。むしろ引っ越す理由が見つからなくなった二人は、改めて愛すべき生活拠点についてこう語ってくれた。

「都会なのに都会過ぎない。住んでいる中でそんな居心地のいい一面が見つかったのが、私たちが若林に落ち着いている理由なんだと思います。交通に便利で気の利いたお店もたくさんあるけど、誰でも知っているようなチェーン店ばかりじゃない。住み始めた6年前と比べると、個人店が多くなっている印象がありますね。いろいろなお店が揃っているという意味では都会っぽいけど、個人店が集まって街が盛り上がっているのは、東京の中の地方を感じます」(だこさん)

「僕は仕事とのオンオフを重視したい人が住みやすいエリアだと思います。個人的に不思議なのが、この地域がきっかけで誰かと出会って仕事と絡まなかったとしても、純粋に刺激を受けることがめちゃくちゃ多いんです。僕自身、そんな友達が都会的な刺激という意味では20代前半の若い人には物足りないのかもしれないけど、面白い人が多く住む地域だと思うから、それこそ新社会人や新入生の人なんかは、思いきって飛び込んできてもいいんじゃないかな」

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渋谷に新宿、銀座に六本木など、誰もが思い描く東京には、目に見える刺激がたくさんあふれている。そんな繁華街と比べると、ある人にとって世田谷ミッドタウンは物足りないのかもしれない。けれども、ヤスさんとだこさんが語ってくれた新旧のお店が入り混じった独特の街並みは大都会にはない、世田谷ミッドタウンならではの風景だ。東京の刺激は必ずしも大都会だけではない。二人の言葉はまさにそれを物語っている。

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