Sandwich&Co.

鈴木沙織さん

最寄り駅
桜新町

桜新町駅、もしくは上町駅から10分ほど歩くと見えてくる、昭和感の漂うレトロなマンション。その1階には2017年10月にオープンした、話題のサンドイッチ屋『Sandwich&Co.』がある。昔からサンドイッチが好きで好きでたまらなかったという鈴木沙織さんが、その長年のサンドイッチ愛を形にしたお店がここだ。店内には色とりどりのサンドイッチが並び、その姿は個性的でとてもアーティスティック。思わず写真に撮りたくなるほど、鮮やかな断面図を披露する。

文章:仁田ときこ 写真:奥川純一 構成:鈴石真紀子

駅近ではない場所に、あえてお店を開くこと

『Sandwich&Co.』がある場所は、決して利便性の良い立地ではない。駅から離れているうえ、周囲には目立ったお店も少ない。けれど、鈴木さんはあえてこの場所を選んだ。

「駅の近くにお店があると、きっとお客さんはもっと多いと思うんです。でも、それだと1人1人のお客さんとじっくり話せないでしょ? お客さんも入れ替わり立ち替わりで、ゆっくりと落ち着いて食べられないと思うんです。そういう回転が早いお店にはしたくなかった。地元の人に根付いた、周囲に愛されるお店にしたかったんです。だから、あえて駅から離れた場所で、逆に公園や学校が近くにある、のんびりした場所を探しました。このエリアはほんのり下町の雰囲気が漂う住宅街で、見た瞬間に即決でしたね」

結果、お店は毎日多くのお客さんで賑わうものの、鈴木さんが思い描いたとおり、みんながゆったりと各々の時間を落ち着いて過ごしている。せわしない空気は微塵もない。読書をしながら1人でのんびりサンドイッチを食べる姿もあれば、子連れのお母さん同士がワイワイと談笑する姿も。和やかな日常が、毎日描かれる。

「若い人だけでなく、近所のおじいちゃんやおばあちゃんも多いんですよ。毎日欠かさず通ってくれる小さな男の子もいるんです。そういうのって、本当にうれしい。“あぁ、この子たちの成長を見守りながらお店を続けていきたいなぁ”って、常々思います。レギュラーサイズを半分にしたキッズサイズもあるので、これなら子どもはもちろん、お年寄りにもちょうど良いボリュームで食べていただけるかと」

そんなお店の内装には、鈴木さんのこだわりが随所に伺える。装飾のないシンプルな空間に、テーブル席とカウンター席を設置し、レジ前には子どもが遊べそうなスペースも。店内が広々としているのでベビーカーでも気軽に入れて、置き場にだって困らない。

さらに、照明はあえて少なくして、窓と扉をすべてガラス張りにしたのも鈴木さんの要望。自然光がやさしく入る、リラックスできる空間にしたかった。手がける商品は若者ウケするサンドイッチでも、老若男女に関わらず誰でも気軽に入れるお店にしたかった。

そうして、気づけば、知らないお客さん同士が気さくに会話する光景をよく目にするようになった。空間に遮るものがないおかげで、お客さん同士の目線が合いやすいのだ。鈴木さんも交えて、毎日のようにいろいろな人が会話を楽しむ。

子どもが走ると注意するお店が多いなか、ここではそれもOK。店内の段差で遊ぶ子がいても、鈴木さんはニコニコ笑顔だ。この優しい空気に救われているお母さんも多いはず。ホッと気を緩められる居場所を見つけられた、と話すお母さんたちもいた。


サンドイッチ愛から、本物のお店ができるまで

鈴木さんがサンドイッチ屋をオープンするに至るには、その根底に揺るぎないサンドイッチへの愛情がある。昔からサンドイッチが好きで好きで、今でも“三食サンドイッチで良い!”というほど深い愛情を注ぐ鈴木さん。完売になった日は「今日も食べられなかった~」とガックリ肩を落とすほど。


しかし、以前はなんとゲームのエンジニアの仕事をしていたというから驚かされる。毎日パソコンとにらめっこして、ゲームを開発する日々。そんななか、鈴木さんの先輩が「自分の子どもにはやらせられないものを作っている仕事だ」と言って退職した。これが大きな転機となる。先輩の言葉に突き動かされるように、鈴木さんも有機野菜を扱う食材宅配会社・Oisixへの転職を決意した。Oisixのサイトには“自分の子どもに食べさせられる”という言葉があり、鈴木さんの胸を打ったのだ。子どもに安心して食べさせられる、安全な食材を扱いたかった。

Oisixでは多くの農家を知ることになり、本当に美味しい食材に沢山出会えた。会社では野菜をもらえるので、それらを使って毎日お弁当をつくるようにもなった。

「でも、お弁当を毎日つくるって、やっぱり大変なんですよ(笑)。帰宅したらお弁当箱を洗わなきゃいけないし、毎日ご飯を炊いて献立も考えなきゃいけない。そんなある日“サンドイッチにしちゃえば、食材を挟むだけで簡単だし、包むだけだからお弁当箱を洗わずに済む!”と思いついて。サンドイッチが昔から好きだったのもあって、それからはずっと昼食がサンドイッチになりました。毎日つくるモチベーション維持のために、インスタグラムにアップすることも日課にしたんですよ。そうしたら、具材と野菜のボリューム感がどんどん増していって(笑)。それに比例するかのように、私のサンドイッチもいつの間にか沢山の人に見てもらえるようになっていったんです。インスタグラムを通して、メディアへの出演も増えていきました」


そんななかで「サンドイッチ屋をつくりたい!」という気持ちがどんどん高まっていった鈴木さん。自分のつくった栄養のあるサンドイッチで、みんなを笑顔にしたい。毎日食べても健康になるサンドイッチをつくっていきたい。その夢は膨らみ続け、ついにお店を始めるという新たな夢の一歩を踏み出した。

クラウドファンディングを薦められて

自分のお店を持つことを決意した鈴木さん。お店の場所選びや内装工事に取り組むなか、自分の父親からクラウドファンディングを薦められたという。

「新しい資金調達の形であることは知っていたんですが、まさか自分がすることになるとは思いも寄りませんでした。そもそも、私に資金が集まるなんて想像もできなかったし(笑)。でも、お店をオープンするまでの準備期間って、意外と時間があるんですよ。内装工事の間の時間を利用して、やってみようかなと思って。父を含む周囲からの“やれ!やれ~!”という強い後押しもありましたしね(笑)」

実際やってみると、インスタグラムでつながっている人や友人知人以外の、まったく知らない人までが応援してくれるという驚きの事態に。それが自分への良いプレッシャーにもなったという鈴木さん。

「これでもうやめられないところまで来た! 後戻りはできないぞ!っていう気持ちになりましたね。応援してくれる人と一緒にお店をつくっている感もどんどん高まりました。気がつけば支援者が驚くほど増えていって、見事、目標額に達成したんです。はじめはどうなることかと思いましたが…。インスタグラム以外の人ともつながりができる良いキッカケになりました。本当にやってよかったと思っています」

クラウドファンディングで支援してくれた人の一部は、今もお店に名前が掲げられている。最も目立つ壁一面に、支援してくれた人の名前を描いたカッティングボードが並んでいるのだ。これはなんと鈴木さんのお手製。そこには、子どもの名前や会社の名前を記してほしいという人も多かったそう。インテリアにマッチした演出になって、応援した人みんなが喜んでくれた。


また、インスタグラムでつながったイラストレーターさんが『Sandwich&Co.』のキャラクターを立案してくれた。こうしてレッドサンドリーとグリーンサンドリーというかわいいマスコットが誕生する。

「ロゴマークはデザイナーの弟が手がけてくれました。マルのなかにサンドイッチのモチーフが描かれているんですよ」

まわりのみんながそれぞれ、自分にできる形で応援している様子が伺える。そうして鈴木さんのお店は成り立っているのだ。

毎日食べて、健康になるサンドイッチ

サンドイッチを思いっきり食べたい! そんな自身の願望からサンドイッチを発信するものの、やはりタンパク質と野菜と炭水化物のバランスは重要視。一食分でも栄養をしっかり摂れるように栄養バランスをとことん考えている。この点が、子どもに栄養のあるものを食べさせたい親心に刺さってくるようだ。来店する子連れのママが多いのも頷ける。

また、Sandwich&Co.のサンドイッチには大きな特徴がある。インスタグラムで話題の“萌え断”と呼ばれる、色鮮やかな断面図が見られることだ。さまざまな具材が美しく並べられ、それがいくつかの層を描く。どれだけ多くの野菜が使われているのかひと目でわかり、栄養満点なこともよくわかる。

「断面を美しく見せるには、具の向きが大切なんです。ひとつ間違えると、きれいな層にならないので。面を設計していく感じですね。やはり、見た目に美味しそうかどうかってとても大切なポイントだと思うから…。いくら味が美味しくても、美味しそうに見えなかったら、味は半減しちゃうと思うので」

だから、鈴木さんの手がけるサンドイッチは、その外観からも存分に楽しませてくれる。ライ麦やセサミなどの穀物が入ったパンに、たっぷりの季節の野菜。そんなボリューミーな具材に負けないパンの厚みにもこだわり、必ず角食パンを取り入れている。

常時ある定番メニューの4~5種に加え、毎週新作を出しているのも人気の秘密だ。来るたびに新しいメニューに出会えるのは、お客さんにとって大きな楽しみ。常連さんの多くが、この週替わりサンドイッチを心待ちにしているそう。



また、具材に使えない野菜の皮やヘタなども全部使いたいと、ベジブロス(野菜の出汁)を用いたメニューを考案。廃棄ゼロというショップコンセプトを実現させるため、とろみのある二層のベジスープをサイドメニューとして販売することにした。こちらも今やサンドイッチに欠かせない人気メニューに。本来捨ててしまう部分も美味しく活かすことで、生ゴミもほとんどでない。

「仕入れ先を探すのは大変でしたね。どこの野菜でも良いわけではなくて、やはり顔の見える野菜を手がける農家さんから仕入れたかったので…。今は野菜をメインに世田谷で卸し専門の野菜屋さんと取引しています。野菜ソムリエがいるので、栄養に関することも教えてくれるんですよ」

そう笑顔で話す鈴木さんは、通勤が自転車。雨の日も約20分かけて自転車通勤しているというパワフルさ。この元気の源は、やはりお客さんが美味しそうに食べてくれる姿だと言う。SNSと上手につき合い、お客さんとの良い距離感を保ちながら、地元に愛されるサンドイッチ屋はこれからも多くの人を幸せにするのだろう。進化系サンドイッチの奥深い世界は、まだまだ始まったばかり。

住所:東京都世田谷区弦巻5-6-16-103

MAIL:order@sandwichand.co

営業時間:11:00~19:00(売切次第終了)

定休日:日曜、月曜

Sandwich&Co. ウェブサイト http://www.sandwichand.co/

Sandwich&Co. Instagram https://www.instagram.com/risterlab/

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