ななさん・かほさん姉妹

最寄り駅
松陰神社前

(写真右)姉・ななさん、(左)妹・かほさん。出身は、石川県金沢市。二人とも大学進学を機に東京へ。ななさんが大学3年時にアメリカ留学をしている間に、かほさんが上京し、松陰神社前で暮らし始める。ななさんの帰国後から、姉妹二人暮らしがスタート。お互い在学中だった1年半を、松陰神社前で過ごした。ななさんの就職とともに二人暮らしを解消し、現在は東京で別々に生活中。 編集:加藤 将太 文章:軽部 三重子 写真:阿部 高之

東京っぽくない、東京デビューの街。

華の女子大生姉妹が、地元・金沢を離れて東京暮らし。そんな華々しい響きとは裏腹?に、二人が暮らしたのは、学生街でも、名の知れたおしゃれな住宅街でもなく、人とのふれ合いが残る街、松陰神社前だった。

先にこの街に住み始めたのは、妹のかほさん。姉と同様、東京の大学に進学を決めたが、そのとき、姉のななさんは1年間のアメリカ留学中。どうせなら帰国したときに一緒に住もうと、二人で住める部屋を探した。

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「実際のところ、決めたのは母親だったんです。母も石川を出たことがない人なんですけどね。私も東京のことはまったくわからないし。いくつか条件はあったんですけど、この街に住むことになったのは、お互いの大学までちょうど同じくらいの距離だからって、それだけでした」(かほさん)

「私は留学先で聞いたんですけど、ネットで地図を見ながら、『松陰神社前ってどこ? 大丈夫!?』って思ってました(笑)」(ななさん)

「でも、住み始めてみたら、いい場所だなって。商店街もアットホームだし、東京にもこんなところがあるんだ、って驚きました。東京デビューだから構えていたんですけど、いい意味で裏切られましたね。すごく気楽に過ごせました」(かほさん)

心地良い、二人の距離感、都心との距離感。

そして半年後、ななさんの帰国とともに二人暮らしがスタートする。

「留学前に住んでいた住宅街とは雰囲気が違って、落ち着いた街ですよね。東京すぎず、田舎すぎず。田舎出身なので、周りに高い建物があると、住む場所って感じがしなくって。そういう意味でも暮らしやすい街だと思います」(ななさん)

お互いの学校の友達でこの辺りに住む人は珍しかったという。交通の便の問題はあったのだろうか?

「普段は、お互い自転車通学だし、特に苦はなかったです。雨の日は電車を乗り継いで通っていたんですけど、しばらくしてからバスの存在に気が付いて。渋谷まですぐに出られるんですよね。本数も多いし。私は結構、活用してましたよ」(ななさん)

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お互いに学校生活のほかにも、バイトや就職活動で忙しい毎日。それぞれの生活リズムを保ちつつ、時間があえば一緒にご飯に出かけたり、街を探索することも。

「気になるお店を見つけたら、今度一緒に行こうよ、って会話はよくしてたよね。アットホームで居心地がいいお店が多いし、意外と遅くまでやってるし」(かほさん)

「実家にいたときより、仲が良かったんじゃないかな。もちろん、ケンカも日常的にありましたけどね(笑)」(ななさん)

姉妹流 松陰神社前の歩き方

「物干しざおとかドライバーとか、商店街の日用品店(清水商店)で買ったよね。お店のおばさんに探しているものを聞いたりして。よく通ったのは、駅前のカフェ『STUDY』と、煮干しらーめんが美味しい『JIN』。学校行って、バイトして、煮干しらーめんを食べて帰る、みたいな生活を続けてました(笑)。あとは、二人で焼き鳥とかお好み焼きの『土蛍』にも行ったよね。朝の4,5時までやってるんです」(かほさん)

「チェーン店ばかりの街だとどこも同じのような街並みに見えるけど、ここには個性があるっていうか、松陰神社らしさみたいなものがあるから、いいんですよね。住んでいる間にもちょっとずつ街並みが変わってきて、若い人のお店も増えてるし。なんか、イケてる人が松陰神社前で降りるな、って思ってました(笑)」(ななさん)

そんな二人の共同生活も、ななさんの就職を機に解消することになり、二人は別の場所で生活を始めている。それでも、二人は今でもこの街を訪れているという。

「連絡とり合って、二人で来ますよ。『煮干しらーめん食べに行こう、STUDYに行こう』とか。この街のお店ってどこも敷居が高くなくて、ウェルカムな感じだから、ホントに気軽に来られるんです」(かほさん)

現在、かほさんは松陰神社商店街の創業100年を誇るパン屋、ニコラス精養堂でアルバイトをしているが、実はこのバイト、ななさんが大学を卒業するから引き継ぐことになったのだった。

「ニコラスのバイトは帰国してバイトを探さなきゃとなったときに応募しました。家から近いし、パン屋さんのバイトは一度やっておきたかったんですよね」(ななさん)

「姉はいつも本当にわがままというか。『私が辞めるから次はあなたね』くらいの勢いだったんですよ(笑)。でも、すごくアットホームでいいお店だからということで、去年の2月くらいから働き始めているんです」

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ななさんは大学4年の冬、毎晩のようにパソコンを抱えてSTUDYを訪れていたという。電源が近くにある席に座っては卒論に追い込みをかける。ひと息つこうとすると、バイト上がりのかほさんが合流する。この日のように、二人で行くときはほとんどソファ席だった。

学校とバイトだけじゃない、私たちの居場所。

二人で暮らしていた日々を振り返ると、二人は「この街でよかった」と声を合わせる。最後に、それぞれが思うこの街の一番の良さを語ってもらった。

「住むほど愛着が持てる街なんですよね。今は住宅街に住んでいて、どこにでもあるような特徴のない街なんですけど、松陰神社は、街もお店も人も、ここにしかない感じがあるから好き。それに、人との関わりも多いから、コンタクトレンズ屋さんで新しいお店を紹介してもらったりして、知り合いの輪がどんどん広がっていくんです。それが楽しい」(かほさん)

「私は王道を行くのが嫌いなタイプなんですよね。学生っていうと、チェーン店に行ってワイワイ、宅飲みしてワイワイ、みたいな流れがあると思うんですけど。それとはちょっと違う学生生活を過ごせましたね。この街に暮らしていると、学校とバイト以外に、街っていうコミュニティがある。だから、東京にもご近所付き合いがあるっていうのは衝撃でしたね。顔見知りの人がこの街にはいっぱいいるんです。上京してきた学生には珍しい、この街ならではの、あたたかい生活が送れたかな、と満足しています」(ななさん)

「ここが、私たちが暮らしていた家なんです」と、二人は松陰神社をお参りした後に以前住んでいたアパートまで案内してくれた。もう二人が一緒に住むことはないかもしれない。でも、子どもから大人になっていく微妙な年ごろを、親元を離れて姉妹だけで過ごせたことはかけがえのない経験だ。久しぶりの姉妹の街歩きは、まだまだ思い出話が尽きない。

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